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Mテクノロジーについて

他の言語との比較

MUMPSには,先に述べた特徴が掲げられる。ここで代表的なコンピュータ言語について,その特性を比較する。比較対象の言語には,広く普及しているFORTRAN,COBOL,BASICと,最近,話題となっているPASCAL,FORTH,Cと計算機において最も基本的な言語であるアセンブリ言語を選んだ。また,比較項目としては,会話型処理,習得容易性,記述性(入出力/文字列/数値演算),変数独立性,データベース機能,機密保護機能,間接指定機能,間接命令実行,移送性,定型業務,非定型業務,開発・通用コストパホーマンス,メンテナンス性,実行速度(演算/入出力),言語のコンパクト性の18項目とした。また,評価は4段階(◎優秀,○良い,△普通,×劣る)とした。なお,この特性評価は,その項目内での言語間の相対評価であって,項目が変ると評価基準が異なる。特性比較の結果とその言語の主な用途とを表5に示す。

会話型処理について見ると,インタプリタ言語であるMUMPS,BASICとFORTHが上位となり,言語の習得性は,命令が日常語に近いMUMPS,BASICが良い。記述性は,入出力処理においてMUMPS,COBOLが高く,文字列処理はMUMPS,BASICが高い。また,数値演算性ではFORTRAN,PASCALが極めて良い。用いる変数の独立性は,PASCAL,Cが良い。データベース機能は,検索,ソート,マージ,ファイル管理と種々の内容を含むが総合的にMUMPSやCOBOLが優れている。特にMUMPSのデータ配列はトリー構造でスパースアレイ機能を持っており,添字に文字列を使用でき,一層このデータベース機能を高めている。機密保護機能は,MUMPSが優れている。他の言語では,このような発想がなくアプリケーションプログラムで個々に対処するか,あるいはオペレーティングシステムに面倒を任せている。間接指定の機能や間接命令の実行機能も特にMUMPSが優れている。この機能を持つことは,言語の柔軟性が高いことを意味し,各種の問題にすばやく対処する事ができる。プログラムの移送性は,標準化が進んでいるMUMPS,FORTRAN,COBOLが高い。定型業務に対する処理は,実行速度と言語の歴史が合い伴ってFORTRAN,COBOLが高い。これに対して,非定型業務に対する対処の容易性は,インタープリンタ言語である事と命令の間接実行機能が合い伴ってMUMPSが高い。開発・運用のコストパホーマンスは,MUMPS,BAISCが高い。メンテナンス性は,言語の設定がより具体的で自由度の少ないCOBOLやPASCALが高い。実行速度は,アセンブリ言語が機械語に1対1に対応していると言う事で一番速いが,入出力での実行速度を見るとMUMPSもかなり速い。これは,データベース機能のデータ収集,検索能力が高いことを示している。言語のコンパクト性は,命令(コマンド)がよく吟味され命令数が少なく,さらに命令の間接指定ができるMUMPSが高い。言語の用途であるが,言語には一長一短があり,すべての仕事に対しオールマイティーの言語はなく,目的に合った言語を選ぶ必要がある。大まかにその用途を見ると,MUMPSは非定型のデータベース処理向き,BASICは小規模な処理向き,FORTRANは科学技術計算向き,COBOLは定型事務業務向き,PASCALは中規模な処理や計算機教育向き,FORTHは制御処理向き,Cはシステム開発向き,アセンブリは制御やシステム開発用と言える。

以上,MUMPSを他の手続き型の言語と比較したが,MUMPSは,言語とシステムが一体になっており,この比較表から見ても他に比べ際立って優位な存在となっている。言語としても,全体的にバランスが取れており,可変長の文字列データを扱うのに適しており,言語の修得容易性もよく,非定型業務に向いたユーザーオリエントなコンピュータ言語と言える。

表・資料

表1.MUMPSの特徴
表2.標準MUMPSの命令の言語要素と機能
表3.標準MUMPSの演算子と関数の言語要素と機能
表4.グローバル変数の特徴
表5.MUMPSと他言語との特性比較
表6.患者台帳登録処理のMUMPSプログラム
表7.患者台帳登録処理のBASICプログラム
表8.処理内容とプログラム(表6.MUMPSおよび表7.BASIC)との対応表

資料1.MUMPS,BASIC,FORTRANのコマンドの対応表
資料2.MUMPS,BASIC,FORTRANのファンクションの対応表
資料3.MUMPS,BASIC,FORTRANの特殊変数の対応表
資料4.BASIC vs MUMPSの対応表

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