サブノートブックパソコンによる
保健指導システムのGUI化


Redevelopment of Health Consultation System using
Sub-Notebook-Type Personal Computer and MWAPI

大櫛陽一(1)、岡田好一(1)、栗田由美子(2)、坂下祐子(3)、堀江政伸(1)
Yoichi Ogushi(1), Yosikazu Okada(1), Yumiko Kurita(2),
Yuko Sakasita(3), Masanobu Horie(1)

(1)東海大学医学部医学情報学教室
(2)伊勢原市役所
(3)坂下医院

(1)Department of Medical Informatics, Faculty of Medicine Tokai University
(2)Isehara City Office
(3)Sakashita Clinic

 


【要約】
 我々は先の第19回大会において「ノートブックパソコン上での地域健康デ ータベース」を発表した。今回、このシステムをB5版サイズのサブノートブ ックとMWAPIを用いてDOS/V及びMS-WINDOWS環境において動くように再開 発を行ったので報告する。

キーワード:MWAPI、GUI、サブノートブック、保健指導システム

Abstruct:
 We reported "Database System for Regional Health on a Notebook-ttyp
Personal Computer" at 19th Annual Congress of MTA-Japan. This time,
 we have redeveloped the system using a sub-notebook-type personal
computer with DOS/V and MWAPI.

Keyword: MWAPI, GUI, sub-notebook-type personal computer,
     health consultation system


1.はじめに
 我々は先の第19回大会において「ノートブックパソコン上での地域健康デ ータベース」を発表した。(1) このシステムは、NEC-PC98ノートブックパソコ ンとSP-MUMPSを用いて開発された。このシステムの目的は、1市町村の老人保 健法に基づく健診結果を全件データベース化し、保健婦が携帯することにより、 市町村内での保健指導を支援することである。(2-3) 今回、このシステムをB 5版サイズのサブノートブックとMWAPIを用いてDOS/V及びMS-WINDOWS環 境において動くように再開発を行った。再開発の目的は、さらなる軽量小型 化と市役所の保健福祉関係の他のシステムとの操作性の統一である。


2.システム構成と画面構成
 今回の機器構成は次の通りである。
 ・プラットホーム: IBM Think-Pad 230Cs (Intel DX2 50MHz, 540MB)
 ・OS:      DOS/V J6.3 Windows 3.1
 ・MUMPS: MSM-MUMPS 4.0.6A MSM-GUI 1.0.5
 画面の構成は、旧システムとほぼ同じで次のようになっている。
 1)オープニング
   メインメニューの選択(メニューバーとサブメニュー)
 2)セキュリティ
   これは、オペレータ番号、パスワード、システムIDの入力用の3つの    「テキスト」オブジェクトとチェックルーチンを含む。  3)氏名からの個人検索
   この画面は、ローマ字またはカナ氏名の入力用の「テキスト」オブジェ    クト、検索開始「ボタン」、同姓同名者リストを、住所、生年月日、性    別とともに表示する「リスト」オブジェクト、ガイダンス表示の「ラベ    ル」オブジェクト、確定指示の「ボタン」から構成されている。  4)指導画面の選択
   ここは、データ表示・時系列グラフ表示・レーダーチャート表示を選択    する「ラジオボタン」オブジェクト、ガイダンス表示の「ラベル」オブ    ジェクト、健診受診歴表示と対象データの日付選択の「リスト」オブジ    ェクト、照会開始指示用の「ボタン」と、入力条件およびデータベース    のチェック用のルーチンが含まれている。
 5)データ表示
   検査結果が必須・選択・確定の3段階となっており、データベースもこ    れに添って分類されている。従って、この画面では、氏名・性別・生年    月日・年齢を表示する「ラベル」オブジェクト、必須・選択・確定を選    ぶ「ボタン」、健診年月日・医療機関名を表示する「ラベル」オブジェ    クト、検診結果データを表示する「ジェネリック」オブジェクト、健診    日付を切り替えるための"前回"「ボタン」と"次回"「ボタン」、表示の    終了指示のための"QUIT"「ボタン」より構成されている。
 6)時系列グラフ表示
   このグラフでは、同時に4つの検査項目について4色で区別して折れ線    で表示する。横軸は、年であるが健診間隔を実日数計算してプロットし、    折れ線の傾きが検査結果の変化として意味のあるようにしている。まづ、    表示する検査項目、縦軸となる各項目の表示の中心値と目盛り幅、横軸    となる表示年数を指定する。この時のオブジェクトは、氏名などを表示    する4つの「ラベル」、検査項目選択の「リストボタン」、中心値入力    の4つの「テキスト」、目盛り幅入力の4つの「テキスト」、表示年数    選択の「リストボタン」、表示開始指示の「ボタン」である。検査項目    が選択されると、中心値および目盛り幅の「テキスト」オブジェクトに    その検査項目に対応した規定値が、大域変数(グローバル)から参照さ    れ、設定および表示される。
次に、「ジェネリック」オブジェクトの「ドロウ・テキスト」、「カラ    ー」、「円」、「線」の各機能により時系列グラフを表示し、最後に    表示の終了指示のための"QUIT"「ボタン」を設定する。  7)レーダーチャート表示
   レーダーチャートでは、健診の3つの段階ごとに定性的または半定量的    なデータを表示する。3つの表示で共通するオブジェクトは、氏名など    を表示する「ラベル」、必須・選択・確定を選ぶ3つの「ボタン」、表    示の終了を指示するための"QUIT"「ボタン」である。レーダーチャート    は、時系列グラフと同様に「ジェネリック」オブジェクトのもつ機能に    より表示される。必須と選択は1つずつのレーダーチャート、確定は2    つのレーダーチャートで構成されている。


3.結果
 ルーチンの変換作業は、すべてルーチンエディタ(X ^%E)を使用して行った。 このためあまり効率が良くないと思われるが、約1週間で完成した。
 画面の展開スピードは、すべて1秒程度であり、十分なレスポンスが得られ た。ペンティアム搭載の100MHzのノートブックなども出ており、これらでは画 面展開は瞬間的であった。従って、MWAPIは十分に実用に耐えるスピ ードに達しているものと考えられる。
 ルーチンの構成と新旧のルーチンサイズは次の通りであった。
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 ルーチン名(新/旧) サイズByte(新/旧) ルーチンの内容
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 VISEM / %M 1,960 / 3,846    オープニングとメニュー
 VISEJS / ISEJS 2,104 / 2,547 セキュリティ管理
 VISEJS1 / ISEJS1 4,440 / 2,704 氏名入力と同姓同名者選択
 VISEJS11 / ISEJSID 4,608 / 3,022 受診歴表示と日付選択
 VISE2 / ISEJS2 3,232 / 2,693 データ表示用の検査種別選択
 VISEJS21 / ISEJS21 6,984 / 4,475 必須検査データ表示
 VISEJS22 / ISEJS22 5,904 / 3,936 選択検査データ表示
 VISEJS23 / ISEJS23 6,744 / 4,679 確定検査データ表示
 VISEGT1 / ISEGRT1 4,184 / 5,753 時系列グラフ項目など指定
 VISEGT2 / ISEGRT2 9,120 / 4,564 時系列グラフ表示
 VISEGR / ISEGRC 2,648 / 2,777 レーダーチャート用の検査種別選択
 VISEGR1 / ISEGRC1 5,592 / 4,634 必須検査レーダーチャート表示
 VISEGR2 / ISEGRC2 5,536 / 4,560 選択検査レーダーチャート表示
 VISEGR3 / ISEGRC3 7,696 / 6,436 確定検査レーダーチャート表示
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  合 計        70,752 / 56,626
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4.おわりに
 既開発のシステムのGUI化は、当初考えていたより短時間で完了した。
GUI-Builderなどのツールを使うともっと簡単になるものと思われるので、 これからも手持ちのシステムの再開発を積極的に進めて行きたいと考えている。 このためには、多くのプラットホームで、Mテクノロジーの新しいすべての 機能が使えるようになることが期待される。特に、GUI(MWAPI)、D DP、TP処理、GKS、イメージ処理などを強く望む。
 再開発後のルーチンサイズは、旧システムより若干多くなったが、これ はStructured System Variable へのデータセット用の局所変数(ローカル) では略式参照が許されないためフルシンタックスで書く必要があることが主因 である。若干の処理時間の延長を認めて、ワーク用に大域変数を使えばルーチ ンサイズは大幅に削減される。今後の検討に値する課題と考えている。


【参考文献】
1.大櫛陽一、坂下祐子、堀江政伸、栗田由美子:ノートブックパソコン上で   の地域健康データベース、第19回日本MUMPS学会大会予講集、49   −60、1992.
2.大櫛陽一:保健婦がニューメディアに出会うとき−保健婦業務に関する三   つのニューメディアの概要−、生活教育、37(3)、19−20、   1993.
3.大櫛陽一:ノートブックパソコンを使った保健指導の展開、生活教育、   37(6)、48−51、1993.